市場に出回る最高品質の「塩数の子」を購入しても、「下処理で失敗して食感がボロボロになった」「塩が抜けすぎて苦味が出た」という失敗談は後を絶ちません。数の子の塩抜きにおいて、最も犯しやすい過ちが「真水で塩抜きすること」です。
真水に浸けると、浸透圧の急激な変化によって数の子の細胞膜が破壊され、内部に含まれる旨味成分が流出するとともに、エグみや苦味(塩化マグネシウム等の残留苦味)が前面に出てしまいます。失敗を完全に防ぐためには、科学的知見に基づいた「呼び塩(迎え塩)」の手法を徹底する必要があります。
- 薄い食塩水(0.5%濃度)の調製:水1リットルに対し、食塩小さじ1/2弱(約5g)を完全に溶かします。
- 第1段階の浸漬(4時間):調製した食塩水に数の子を浸し、常温(夏場や室温が高い場合は冷蔵庫)で約4時間静置します。
- 食塩水の交換と第2段階(4時間):再度新しい0.5%食塩水を作り替え、さらに4時間ほど浸けます。合計6〜8時間程度で適度な塩気(わずかに塩味が残る程度)に仕上がります。
- 薄皮(白い膜)の丁寧な除去:塩抜き完了後、表面を覆う薄い透明な皮を、指の腹を使って端から優しくこすり落とします。この薄皮を完全に除去することが、調味液(出汁)の浸透を高め、極上の歯ざわりを生む決定打となります。
塩抜き後はキッチンペーパーで水気をしっかりと拭き取り、鰹節を利かせた白だし、みりん、薄口醤油を合わせた漬け汁に半日浸すだけで、料亭級の上品な味付け数の子が完成します。