東日本大震災が発生した直後の2011年3月11日夕刻、東京電力および東北電力の火力・原子力発電所が多数自動停止したことで、首都圏を含む東日本全域は壊滅的な電力不足の危機に直面しました。東京電力が発表した供給能力は平時の需要を大幅に下回り、周波数低下による大規模ブラックアウト(全域停電)を防ぐため、地域ごとに順番で送電を止める計画停電(輪番停電)の検討が急遽発表されます。
交通網の麻痺、暗転する街並み、錯綜する被害報道の中で、首都圏の生活者は「被災地のために自分は何ができるのか」という強い焦燥感と無力感に包まれていました。そうした張り詰めた空気の中、3月12日未明からTwitter上で自然発生的に呟かれ始めた合言葉が「ヤシマ作戦」でした。
この名称の由来となったのは、庵野秀明監督のアニメ作品『新世紀エヴァンゲリオン』のテレビ版第6話(および『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』)に登場する名エピソードです。劇中では、強固なシールドを持つ使徒を倒すため、日本全国の電力を極秘裏に一箇所へと徴発・集約し、超長距離陽電子砲(ポジトロン・ライフル)を一斉射撃する国家規模の作戦が描かれました。
なお、エヴァ劇中における「ヤシマ作戦」の元ネタ自体は、源平合戦の「屋島の戦い」で那須与一が揺れる船上の扇の的を一射で射抜いた故事と、古事記に登場する日本の古称「八州(八島)」に掛けられたものです。この「全国民が一致団結して電力を供出する」という象徴的ストーリーが、電力危機に直面した現実の日本社会の状況と完璧に重なり合い、ネットユーザーの間で驚異的な共感を生み出す原動力となりました。