映画『ロマンスドール』は、2009年に発表されたタナダユキの同名小説を、原作者である彼女自身がメガホンを執って実写化した珠玉のラブストーリーです。美術大学出身の主人公・北村哲雄(高橋一生)は、ひょんなことから医療用人体モデルの製造会社に入社するものの、実態は「ラブドール」を制作する工場でした。最初は戸惑いを隠せなかった哲雄ですが、やがてラブドール職人としての才能を開花させ、よりリアルで美しいドール作りに情熱を注ぎ込むようになります。
そんな中、ドールの胸の型取りモデルとして工場に現れたのが、のちに妻となる園子(ソノコ/蒼井優)でした。哲雄は彼女の美しさに一目惚れし、やがて2人は恋に落ちて結婚に至ります。しかし、哲雄は世間的な偏見や羞恥心から、自分がラブドール職人であることを隠し、「医療用の人工パーツを作っている」と嘘をつき続けてしまいます。
高橋一生と蒼井優の共演は、岩井俊二監督の映画『リリイ・シュシュのすべて』(2001年公開)以来、実に約19年ぶりのことでした。気鋭の映画人たちが認めるトップ俳優同士が織りなす空気感は、新婚当時の初々しい幸福感から、年月が経つにつれて徐々に堆積していく違和感や冷え切った日常までを、息をのむリアリズムで描き出しています。