経済活動の足元を揺るがしているのが、労働市場における深刻な供給不足です。帝国データバンクの調査でも、企業の半数以上が「正社員の不足」を訴えており、特に人手不足が深刻な業界として物流、建設、医療・介護、外食産業が危機的な状況に直面しています。
時間外労働の上限規制が適用されたことで、現場の疲弊はピークに達しました。長時間の過重労働を是正するという理念の一方で、現場では「業務量は減らないのに残業時間だけが厳しく制限され、実質的なサービス提供能力が削られている」という声が上がっています。これが働き方改革の課題として突きつけられた厳しい現実です。
都内の特別養護老人ホームで働く40代の介護福祉士は、緊迫した現場の空気を次のように明かします。「求人を出しても何ヶ月も応募がありません。資格を持つベテランほど責任と負担が集中し、心身を壊して現場を去っていく。夜勤の巡回を最低限の人数で回すしかなく、入所者の急変に対応しきれない恐怖と隣り合わせの日々です」。業務効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の掛け声とは裏腹に、生身の人間が支えるエッセンシャルワークの基盤は崩壊寸前に追い込まれています。