プロ野球選手がユニフォームを脱いだ後、指導者や解説者の椅子を巡る過酷な椅子取りゲームに敗れ、表舞台から姿を消すケースは少なくない。しかし、今村猛が選んだ道は、そうした旧来のセカンドキャリアモデルとは一線を画している。2026年現在、彼は広島を本拠地に据えながら、「タレント・メディア解説」と「地域密着型ビジネス」を巧みに融合させたマルチ実業家としてのポジションを確立している。
広島の民放各局(RCC中国放送、広島テレビなど)でのプロ野球中継におけるゲスト解説や情報番組への出演は、現役時代を知るファンから絶大な安心感を獲得している。現役時代は口数が少なくシャイな印象を持たれていたが、引退後は自然体の語り口と現役目線のロジカルな配球解説で評価を高めた。メディア露出と並行して彼が注力するのが、長年培った人脈と知名度を活かした実業展開だ。
報道各社や地元経済誌の動向を追うと、今村は引退直後から自身がプロデュースするアパレルラインの展開や、大の愛好家として知られる「釣り」に関連したコンテンツ制作・イベント運営を精力的に展開してきた。公式YouTubeチャンネルでは、瀬戸内海を中心とした本格的なフィッシング動画や、カープOBたちとの飾らない対談を配信し、コアなファン層をがっちりと掴んでいる。さらに、地元飲食店のプロデュースやスポーツアカデミーの巡回指導など、活動領域は年々広がりを見せている。
特筆すべきは、引退したアスリートが陥りがちな「東京への一極集中」を選ばず、一貫して「広島という地域社会」に還元する事業構造を組み立てている点だ。カープファンが持つ特有の熱量と地域密着のコミュニティを誰よりも理解しているからこそ、単なる一過性のタレントに終わらない強固なビジネス基盤が維持されている。