1961年、作曲家・いずみたく氏とのタッグで世に送り出された『手のひらを太陽に』は、やなせたかし氏の作詞による不朽の名曲です。この楽曲が誕生した背景にも、表現者としての苦悩と生命への執着がありました。
当時40代を迎えていたやなせ氏は、仕事が軌道に乗らず、極寒の仕事部屋で一人懐炉を抱えながら将来への絶望に打ちひしがれていました。ふと机の上のスタンドライトに手をかざした瞬間、自分の手のひらの皮膚が赤く透け、毛細血管を流れる血液が目に入りました。
「自分は今、失意の底にいるが、体の中では確実に血が巡り、生きている。ミミズだってオケラだって、みんな必死で生きているんだ」
その瞬間の強烈な閃きから生まれたフレーズこそが、「ぼくらはみんな生きている 生きているから歌うんだ」でした。自らの絶望を生命の讃歌へと昇華させるこの作画姿勢は、後のアンパンマンのテーマソング『アンパンマンのマーチ』における「なんのために生まれて なにをして生きるのか」という深遠な問いかけへと直結しています。