一歩足を踏み入れると、圧倒されるのはその天井の高さだ。太く黒光りする梁(はり)が頭上を走り、明治の職人たちが残した手仕事の跡が今も息づいている。この重厚な和の空間に、あえてモダンなアイアンのハイチェアや、スペイン直輸入の生ハム原木が並ぶカウンターを配した。
このコントラストが心地いい。伝統的な日本家屋の持つ「陰翳(いんえい)」の美しさを活かしつつ、間接照明の温かい光が、肩肘張らないカジュアルなバルの雰囲気を演出している。古いものをただ保存するのではなく、現代のライフスタイルに合わせて「使い切る」という思想が、ここには貫かれている。