ネット上の掲示板やサッカーファンの間では、「48カ国に拡大したことで大会の質が落ちるのではないか」「大差のつくワンサイドゲームが増えて退屈になる」という批判的な言説が根強く囁かれています。しかし、スポーツビジネスと戦術分析の観点から現場を検証すると、この俗説には大きな盲点が存在します。
第一に、「各組3位のうち上位8チームが勝ち上がれる」という仕組みが、グループステージ最終戦の緊張感を極限まで高めます。従来の32カ国制であれば2連敗した時点で消化試合となるケースが多々ありましたが、新フォーマットでは「勝ち点3や1勝を挙げれば得失点差次第でラウンド32に進出できる」ため、すべての国が最後の1分1秒まで泥臭くゴールを奪いに行くことになります。
第二の見落とされがちなリスクは、「広大すぎる開催地による移動疲労と気候格差」です。アメリカ、カナダ、メキシコの16都市は、高度2,000メートルを超える高地(メキシコシティやグアダラハラ)から、初夏に猛烈な湿気と熱波に見舞われるマイアミやヒューストン、そして冷涼なバンクーバーまで環境が激変します。
「ネームバリューのある強豪国が、移動によるコンディション調整の失敗で格下に足元をすくわれるジャイアントキリング」が多発する構造が最初から組み込まれているのです。「レベルの低下」どころか、むしろ「かつてない波乱と過酷さに満ちたサバイバルマッチ」になるというのが、取材を重ねる専門家の一致した見解です。