一般的に「うなぎの肝」と呼ばれる部位は、単なる肝臓(レバー)だけを指すわけではありません。職人の現場では、心臓や胃、腸、浮き袋などを含む「内臓一式」を丁寧に下処理したものを総称して肝と呼んでいます。生命維持の中枢を担う内臓器官が凝縮されているため、身の部分とは比較にならないほど特異な栄養プロファイルを示します。
文部科学省が公表している「日本食品標準成分表」の最新データを突き合わせると、その格差は一目瞭然です。特に際立つのが、粘膜や視覚機能を守るビタミンA、全身への酸素運搬を担う鉄分、そして赤血球形成に不可欠な葉酸の含有量です。
身と比較して低カロリーでありながら、鉄分は蒲焼きの5倍強、ビタミンAは実に約3倍という驚異的な密度を誇ります。この数値を見れば、古くから夏場の滋養強壮や眼精疲労の特効薬として珍重されてきた歴史的背景にも確かな科学的根拠があったことが理解できます。