陳列棚に並ぶのは、ノスタルジーという感傷だけではない。生々しい価値の暴騰だ。かつて制作スタジオの現場で使い捨て同然に扱われていた手描きセル画が、いまや世界基準のアートピースとして数百万、時には数千万円の評価を受けて額装されている。デジタル作画が完全に定着した今、かつての職人たちが絵の具を塗り重ねた「一点モノ」の物理的実体は、二度と生み出せない美術工芸品となった。
棚が放つ重圧は凄まじい。80年代ロボットアニメの超合金、初版の少年漫画、伝説的な同人誌、果てはマイナー特撮番組の台本に至るまで、あらゆるジャンルの情熱の残滓が凝縮されている。ガラス越しにそれらを見つめる客の瞳には、少年の頃の純粋な憧憬と、冷徹な投資家の審美眼が奇妙に同居している。