劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』の物語を知る者にとって、「ファンファーレ」の歌詞は単なるオープニングの景気づけではなく、物語全体の結末を先回りして受け止める巨大な受け皿として機能していることが分かります。
本作の最大の衝撃は、不治の膵臓の病を患っていた桜良が、病気によってではなく、ある日突然通り魔事件に巻き込まれて命を奪われるという不条理なラストにあります。病室で数か月後の別れを覚悟していたはずの「僕」の前に、あまりにも唐突に突きつけられた絶望。もしこの楽曲が単なる希望だけを歌うものなら、「光る朝」や「虹」だけを迎えに行けばよかったはずです。
しかし、歌詞は明確に「光る朝も 雨も虹も 今から全て迎えにゆくよ」と歌い上げます。人生には輝かしい喜びだけでなく、降りしきる冷たい雨のような悲劇や理不尽も確実に存在する。その逃れられない苦痛すらも丸ごと抱きしめ、自分の足で一歩を踏み出すという覚悟は、まさに桜良を失った後に「僕」が辿り着いた生き直しの誓いと寸分の狂いもなく一致しています。死の影を色濃く漂わせながら、それを受け止めて鳴り響くからこそ、この曲は「ファンファーレ(始まりの合図)」と名付けられたのです。