実際にマルチタスクからシングルタスクへと舵を切ったビジネスパーソンたちは、日々の業務でどのような変化を体感しているのか。現場の証言を検証すると、共通した苦悩の解消プロセスが浮かび上がってきます。
都内のIT企業でプロダクトマネージャーを務める30代男性は、かつての自身の働き方を「常に脳が過熱して煙を吹いていた状態」と述懐しています。
「以前はSlackの未読をゼロに保ちながら仕様書を書き、並行してオンラインミーティングに参加していました。定時を迎えると疲労困憊で立ち上がれないほどなのに、自身のタスクは1ミリも進んでいない。罪悪感と焦りで深夜残業を重ねる日々でした。思い切って午前中の2時間を『チャット完全遮断のシングルタスク枠』に指定したところ、1週間かかっていた要件定義がわずか2日で完成した。通知を切る罪悪感よりも、質の高い成果物を素早く出すほうが結果的に周囲の評価も高まることに気づきました」
SNSや大手コミュニティサイトの生の声を見ても、「マルチタスクを美徳としていた頃は、常に頭の芯が重く、週末になっても仕事の不安が消えなかった」「一度に1つのことしかしないと決めてから、夕方の疲労度が体感で半分以下になった」という実感が多数寄せられています。多くの人が「即レスしなければならない」という自縄自縛に陥っており、自らの意志で境界線を引くことによってのみ、本来の知的パフォーマンスを取り戻せることが分かります。