「テープを何重にも固く巻いたのに、翌朝ベッドから起き上がると前日より激しく痛がる」「練習後に踵の腫れがひどくなった」――整形外科の問診室で、保護者から頻繁に寄せられる証言です。なぜ、痛みを抑えるはずのテーピングが逆効果になってしまうのか。その背景には、シーバー病が引き起こされる骨と腱の解剖学的構造に対する根本的な誤解が存在します。
10歳前後の発育期にある踵骨には、「踵骨骨端核(しょうこつこったんかく)」と呼ばれる柔らかい成長軟骨が存在します。ここには上方から人体最強の腱である「アキレス腱」、下方から足裏のアーチを支える「足底腱膜」が強固に付着しています。走る、跳ぶといった激しい運動のたびに、この未成熟な軟骨が両方向から強力に引っ張られ、微小な骨折や炎症を起こすのが踵骨骨端症の正体です。つまり、膝下の代表的成長障害であるオスグッド病と全く同じ牽引ストレスが踵で起きているわけです。
ここで多くの大人が犯す過ちが、非伸縮のホワイトテープで踵から足首をカチカチに締め上げ、足底のアーチを押しつぶしてしまう処置です。足の裏には着地衝撃を吸収するクッションシステム(トラス機構)が備わっていますが、硬いテープで圧迫しすぎるとそのバネが完全にロックされます。その結果、走った際の衝撃がすべて直接、炎症を起こしている踵骨骨端部に突き刺さる形となり、症状が急激に悪化します。さらに、強い締め付けによる局所のうっ血が組織の回復を大幅に遅らせるという致命的な二次被害をもたらすのです。