流通技術が進歩した昨今、全国どこでも「獲れたての味」を謳うことは難しくない。だが、市場の敷地内で食す魚には、論理を超えた説得力がある。
松戸南部市場の片隅に佇むこの店では、仲買人たちとの長年の呼吸がそのまま仕入れの質に直結している。数分前まで氷の敷かれた木箱に横たわっていた魚が、熟練の手によって素早く締められ、適切な温度で酢飯と合流する。鮮度をただ誇るだけの弾力勝負ではない。脂の回り具合を見極め、わずかに寝かせるべきか、それとも朝獲れの張り感をそのまま届けるべきか。その一瞬の判断こそが、市場に根を張る職人の腕の見せ所だ。
舌の上でとろける中トロも、歯切れのよい白身も、すべてが「いま、ここ」でしか味わえない鮮明な輪郭を持っている。皿の上で魚が生きていた時間の記憶が、すっとほどけていく感覚は格別だ。