伝統的な「祝い膳」の基本は、一汁三菜をベースにした献立構成です。それぞれの料理には単なる栄養面だけでなく、過酷な乳児死亡率に直面していた先人たちが込めた言霊(ことだま)と象徴的な祈りが込められています。
主役となる祝い膳鯛のレシピと準備では、頭から尾まで欠けることのない「尾頭付き(姿焼き)」を用います。これは「最初から最後まで全うする」という長寿の象徴です。自宅で調理する場合は、内臓とウロコを丁寧に取り除き、ヒレや尾に化粧塩を厚めに施してアルミホイルで保護しながら焼き上げることで、焦げを防ぎ美しい姿に仕上がります。さらに、邪気を祓う赤色をまとった「赤飯」、吸う力が強くなることや良縁を祈願する「ハマグリのお吸い物」、将来の見通しがきくレンコンや子宝を願うサトイモを含めた「煮物」、そして長寿の象徴であるシワができるまで生きる願いを込めた「梅干しや香の物」が並びます。
儀式で最も戸惑いやすいのが、食事の真似事をさせる「手順」です。食べる順番と理由には、穀物と海の幸、山の幸を交互に口元へ運ぶことで、豊かな大地の恵みを余すところなく授かるという意味が込められています。
具体的な順序としては、「赤飯 → お吸い物 → 赤飯 → 鯛などの焼き魚 → 赤飯 → お吸い物」というサイクルを1つの基本セットとし、これを3回繰り返します。その後、煮物や香の物を挟み、最後に後述する「歯固めの儀式」へと移るのが正式な作法です。もちろん赤ちゃんはまだ固形物を咀嚼できないため、料理を乗せた祝い箸の先を赤ちゃんの唇にチョンと優しく触れさせるだけで十分です。途中で赤ちゃんがぐずったり眠くなったりした場合は、形式にとらわれず儀式を一時中断し、赤ちゃんのペースに寄り添う臨機応変さが現場では何より求められます。