SNSやネット掲示板で定期的に拡散されるのが、「厚別公園競技場は建て替え計画で近々取り壊される」という言説です。しかし、この言説には重大な誤解が含まれています。
結論から言えば、札幌市が検討を進めている基本方針は「巨額の市債を発行して数百億円規模の専用スタジアムを新築する建て替え」ではありません。人口減少と財源の引き締めが進む中、自治体スポーツ行政の現実的なコンセンサスは「長寿命化改修(施設の延命と安全確保)」です。
自治体の財政課や施設管理担当が直面するシビアな計算式を見落としてはなりません。もし厚別を解体し、J1規格を完全充足するサッカー専用スタジアムを新設した場合、工費は200億円から300億円規模に膨らむと試算されます。一方で、札幌ドームが既にプロ興行の受け皿として機能している以上、重複投資に対する市民や市議会の理解を得ることは極めて困難です。そのため、基本計画の主眼はあくまで「陸上トラックの再公認」「電気・衛生設備の更新」「耐震・構造安全性の確保」という実利的な補修に置かれています。
ネット上で流布する「派手なリニューアル構想」に惑わされることなく、今ある歴史的ストックをいかに壊さずに使い続けるかというサステナビリティの視点こそが、現在進行している議論の核心です。