日焼け後に皮膚が剥離する現象は、専門的には「落屑(らくせつ)」と呼ばれます。短時間に強力な中波長紫外線(UVB)を浴びると、表皮の角化細胞(ケラチノサイト)内のDNAが深刻な損傷を受けます。この異常な細胞が増殖して皮膚ガン化するのを防ぐため、生体は傷ついた細胞を自発的に自死させるシステム「アポトーシス」を発動させます。死滅した細胞群が層となって一斉に剥がれ落ちてくるプロセスこそが、皮むけの正体です。
ここで多くの人が疑問を抱くのが、「浮いてきた日焼けの皮は剥いていいのか」という点です。結論から言えば、自らの手で無理に皮を剥がす行為は百害あって一利なしです。
まだ自然に剥離していない皮の下には、形成途中にある極めて薄く未成熟な表皮細胞が存在しています。指でつまんで一気に剥ぎ取ると、この未熟な生きた細胞まで一緒に引きちぎってしまい、微小な出血や目に見えない傷(マイクロトラウマ)が生じます。
肌組織が物理的に傷つくと、防衛本能として局所で急性の炎症性サイトカインが再放出されます。すると基底層にある色素細胞(メラノサイト)が刺激され、メラニン色素を大量に生成し続けてしまいます。これが、無理に皮を剥いだ部位に褐色や黒ずんだ跡が定着する「日焼けの皮むけがシミになる理由(炎症後色素沈着:PIH)」の正体です。最悪の場合、表皮のバリア機能が完全破壊され、数ヶ月から数年にわたり不均一な色ムラとなって残存します。