2019年に本格施行された改正刑事訴訟法により、裁判員裁判の対象となる重大事件や検察庁の独自捜査事件において、取調べの全過程を録音・録画する「可視化」が義務付けられました。制度導入から年月を経た現在、捜査現場におけるあからさまな暴力や罵倒といった不当捜査は大幅に減少したと評価されています。
しかし、捜査報道を専門とする記者たちの間では、警察 取り調べ 可視化の制度的「死角」が激しく議論され続けています。可視化が義務付けられている事件は、警察が取り扱う全刑事事件のわずか3%〜5%程度に過ぎません。世間の耳目を集める特殊詐欺や一般の窃盗、痴漢、傷害、道路交通法違反といった「日常的な事件」のほとんどは、今なお録音も録画もされない遮蔽空間で取調べが進行しています。
さらに深刻なのは、録画が実施される対象事件であっても、「カメラを回す前の雑談」や「留置場から取調室への移動中」、あるいは「任意の事情聴取段階」で行われる巧妙な誘導です。カメラの外で被疑者の精神的防御を周到に崩し、納得させた体裁を整えてから録画のスイッチを入れ、淀みなく自白調書を読み聞かせて署名させる。こうした「部分的可視化」がもたらす新たな冤罪の温床に対して、弁護士会や人権団体は強い懸念を示し続けています。