割れた器に宿る真の美|横浜・山笑堂が守り抜く「天然本漆金継ぎ」の哲学
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現代において「金継ぎ」と称するサービスの中には、エポキシ樹脂や強力の瞬間接着剤、ラッカー塗料を用いて数時間で完了させる簡易修復も増えている。手軽で安価というメリットはあるものの、食品をのせる食器としての安全性や、熱湯に対する耐性、数十年単位の耐久性においては大きな懸念が残る。
対照的に、山笑堂が貫くのは漆の木から採取された純粋な「生漆(きうるし)」のみを用いる極めて妥協のない工程である。天然漆による修復は、一朝一夕には終わらない。接合塗料を作るために生漆と小麦粉を練り合わせた「麦漆(むぎうるし)」を作り、破片同士を接着させる。乾かすためには適度な湿度の維持が必要となり、固化するだけで数週間を要する。
段差を埋める「錆漆(さびうるし)」の塗布、耐水砥石による丁寧な研ぎ出し、下地となる「弁柄漆(べんがらうるし)」の塗り重ね、そして最終的に金粉や銀粉を蒔いて固めるまで、数カ月もの歳月が費やされる。途方もない時間と手間をかけるからこそ、口に触れても安全で、使うほどに深みを増す堅牢な器へと蘇るのだ。