画面越しの世界を色彩に変える画家・辰巳菜穂の全貌|「Street View Journey」が捉える記憶と空間

Take a closer look at 画面越しの世界を色彩に変える画家・辰巳菜穂の全貌|「Street View Journey」が捉える記憶と空間 in this comprehensive feature.

辰巳の名を広く知らしめたコンセプトが「Street View Journey」だ。これは、Googleストリートビューを用いて世界各地の路地裏やアクセスが困難な場所を仮想訪問し、その風景を描き出すプロジェクトである。

辰巳菜穂の代表作Street View Journeyの絵画表現

画面に映し出されるストリートビューの画像は、本来、膨大な幾何データと写真の繋ぎ合わせに過ぎない。記録された「一次情報」だ。しかし、辰巳の手に渡ると、それは一転して濃密な情緒と「美意識」をまとった空間へと生まれ変わる。

解像度の粗い画像、カメラの歪み、偶然映り込んだ看板や道路標識。通常であれば「ノイズ」として排除される要素を、彼女は構図の主役に据える。標識の意味を解体し、色と形の純粋なエレメントとして画面上に再構築する作業。そこには、意味の呪縛から風景を解き放つ快感が存在する。

「記録」を「記憶」へと書き換える絵筆

人間は旅先で何を見るのか。綺麗な景色だけではない。ふと目に入った信号機の赤、壁に反射する斜光、埃っぽい看板の文字。辰巳の作品は、誰もが通り過ぎてしまう刹那の光景に焦点を合わせる。デジタルカメラが収集した無機質な「記録」が、絵の具の厚みと色調によって、鑑賞者自身の「記憶」の風景へと重なっていく。

James H. Sterling

James H. Sterling

Environmental Science & Climate Journalist

James Sterling reports on renewable energy developments, climate policy, ecological conservation, and green tech innovations around the globe.

Share this article
Twitter Facebook Pinterest