画面から溢れ出る知性と論理的な役作りは、彼の卓越した知性と険しい下積み時代に裏打ちされています。迫田孝也の出身高校は、県内トップクラスの進学実績を誇る鹿児島県立鶴丸高等学校。その後、国立の広島大学教育学部(教科教育学科保健体育専修)へと進学しました。
もともとは教員を志し、保健体育の教員免許を取得していた彼ですが、人生の転機は大学時代に訪れました。奄美大島で映画の撮影隊(山田洋次監督の現場など)と出会い、制作スタッフや役者たちの熱気と生き様に心を激しく揺さぶられます。「自分も表現の世界で勝負したい」と決意した迫田は、大学卒業後に着の身着のままで上京を果たしました。
しかし、コネもツテもない上京直後は、オーディション雑誌を開きながらアルバイトに明け暮れる日々。やがて演出家・森岡利行が主宰する劇団『STRAYDOG』の門を叩き、研修生として入団します。そこから約8年間、泥臭く舞台に立ち続け、発声や身体表現、人間の業を骨の髄まで叩き込まれました。華やかな脚光を浴びることなく、舞台裏の仕込みから小さな役までを泥臭くこなした8年間の劇団経験こそが、現在のブレない演技の背骨となっています。
その後、映画『ザ・マジックアワー』のオーディションを機に劇作家・三谷幸喜に見出され、映画や舞台、そして2016年のNHK大河ドラマ『真田丸』への抜擢へとつながっていきました。矢沢三十郎頼幸役で見せた「主君を慕い、涙を流す真っ直ぐな瞳」は、長年の鍛錬によって磨き上げられた職人技の結実だったのです。