尖閣発言事件を契機に、SNSやインターネット掲示板で再び激しいバッシングの的となったのが、東京・渋谷のNHK放送センター本館内に「中国中央電視台(CCTV)の日本支局」が入居しているという事実です。「NHKの心臓部に中国共産党のプロパガンダ機関が入り込んでいる」「NHKは中国に乗っ取られているのではないか」といったセンセーショナルな言説が飛び交いました。
この問題の背景には、1980年代の日中記者交換協定および双方の放送局による業務提携協定が存在します。冷戦期の取材環境確保を目的として、NHKとCCTVは相互にオフィススペースを提供する取り決めを交わしました。現在もNHKの中国総局は北京のCCTV関連施設内に拠点を置き、逆にCCTVの東京支局が渋谷のNHK放送センター内にオフィスを賃貸契約の形で構えています。
編集部が過去の協定資料および関係者の証言を精査したところ、CCTVスタッフが日常的にNHKのニュース編集フロアに自由に出入りしたり、制作方針に介入したりする物理的・制度的権限は存在しません。あくまでテナントとしての入居であり、回線や編集室は分離されています。
しかし問題は、視聴者側の感情と情報管理の甘さにあります。台湾有事のリスクや中国の対外宣伝工作が警戒される現代において、国営放送の拠点に他国の宣伝工作機関が同居している光景そのものが、公共放送としての矜持や独立性に疑念を生じさせる強力な火種となっていることは紛れもない事実です。