中将堂本舗が拠点を置く葛城市当麻は、奈良時代創建の當麻寺を中心に栄えてきた門前町です。この寺院に伝わるのが、極楽浄土の光景を織り上げた「当麻曼荼羅」を一晩で織り表したとされる「中将姫(ちゅうじょうひめ)伝説」です。中将堂本舗の屋号および名物「中将餅」は、まさにこの中将姫の徳を偲び、後世に伝える意図から誕生しました。
中将餅の最大の特徴は、その独特な形状にあります。當麻寺は全国屈指の「牡丹の名所」として知られていますが、中将餅に載せられたこし餡の絞り跡は、牡丹の花びらを一枚一枚丁寧に模ったものです。和菓子における造形美と地域の歴史的文脈が完璧に合致している点こそ、単なるお土産菓子にとどまらない文化的な価値を生み出しています。
原材料への妥協なきこだわりも特筆すべき要素です。春先に自社農場や提携地で収穫される天然よもぎを惜しみなく搗き込んだ餅は、着色料に頼らない深緑色をたたえ、口に入れた瞬間に野性味あふれる爽やかな芳香が鼻腔を突き抜けます。この鮮烈なハーブ感と、小豆の風味を残しながらあっさりと仕上げられた瑞々しいこし餡のハーモニーが、多くのリピーターを惹きつけて離しません。