WEB上のレビューで時折見かけるのが、「近代的な稼働工場の中をガラス越しに見られると思っていたのに、昔の道具が並ぶ資料館だった」というミスマッチによる不満です。これは工場見学という言葉のイメージ先行が生んだ誤解と言わざるを得ません。
現在、食品衛生基準の厳格化に伴い、近代的な圧搾・充填ラインの内部へ一般観光客が立ち入ることは制限されています。したがって、マルキン醤油記念館の本質は「稼働ラインを覗くエンタメ施設」ではなく、「日本の近代化を支えた伝統醸造のヘリテージ(産業遺産)を体感するミュージアム」にあります。
さらに見落とされがちなのが、記念館単体で観光を完結させてしまう過ちです。記念館が位置するエリア一帯は小豆島 醤の郷 観光の心臓部。黒い板壁が連なる路地を歩けば、周辺の現役醤油蔵からもろみの香りが漂い、歩道には大正時代の煉瓦造りの煙突が顔を覗かせます。記念館という「点」の鑑賞から、周囲の町並みという「面」の体験へと視点を広げてこそ、小豆島が誇る400年の醤油文化の重みが真に理解できます。