入試や定期試験で最も頻繁に記述問題として出題されるのが、「二酸化炭素(CO₂)が無極性分子であり、水(H₂O)が極性分子になる理由を説明せよ」という設問です。両者とも「中心原子1個に対して別の原子が2個結合している三原子分子」という点では共通しているにもかかわらず、なぜ結論が真っ二つに分かれるのでしょうか。
その鍵を握っているのが、中心原子が持つ「非共有電子対(結合に使われていない電子対)」の数です。
二酸化炭素の場合、中心の炭素(C)は4個の価電子すべてを2個の酸素(O)との二重結合に使っています。そのため炭素上には非共有電子対が1組もありません。負の電荷を持った結合電子対同士が最も離れようと反発し合った結果、結合角は正確に180度の「直線形」をとります。炭素よりも電気陰性度の高い酸素が両側から電子を等しい力で引っ張り合いますが、綱引きで同じ力で真逆に引っ張っている状態と同じであるため、双極子モーメントが綺麗に相殺され、分子全体として無極性になるのです。
一方、水分子の中心にある酸素(O)は、水素(H)と2本の単結合を作る以外に、2組の非共有電子対を抱えています。電子対同士は互いに強く反発し合う性質(電子対反発理論)を持つため、4つの電子対が立体的に離れようとして、酸素原子を中心とした四面体の頂点方向へ広がります。そのうちの2つが結合で、2つが非共有電子対となるため、原子の並びだけを見ると約104.5度の「折れ線形」に押し曲げられてしまうのです。直線ではないため、2本のO-H結合の偏りは打ち消し合わず、酸素側がマイナス、水素側がプラスへと大きく偏留した極性分子となります。