ネット上の掲示板やSNSの一部では「陸王は戦時中にハーレーを勝手に模倣したコピーバイクだったのではないか」という誤った言説が見受けられます。しかし、歴史公文書および米国ハーレー社側の公式記録を精査すると、この説は明確に否定されます。
1930年代当時、米ハーレーダビッドソン社はミルウォーキー工場から最新の工作機械一式を日本へ輸出し、技術者を東京・品川工場に派遣して生産指導を行っていました。つまり、当時の陸王は米国本社公認の正規ライセンス生産車であり、車体各部の寸法規格からボルトのピッチ(インチ規格)に至るまで、当時のハーレーと完全な互換性を有していました。
もう一つの盲点は「戦後の陸王はハーレーの部品をそのまま流用できたのか」という点です。戦前モデル(VL系)ベースの部品はある程度流用可能でしたが、戦後米ハーレーがOHVのパンヘッド系へと進化を遂げたのに対し、陸王は戦前のサイドバルブを独自改良し続けたため、戦後モデルのエンジン内部パーツに関してはハーレー純正品との互換性が失われていきました。この「独自のガラパゴス的進化」が、後年のレストア難易度を極限まで押し上げる要因となっています。