平野部で内陸深くまで水平方向に広がった津波に対し、三陸沿岸のリアス海岸では垂直方向へ恐るべき高さを記録しました。岩手県宮古市重茂(おもえ)の姉吉地区において、東京大学地震研究所や東北大学などで構成された「東北地方太平洋沖地震津波合同調査グループ」が確認した数値は、国内観測史上最高となる最大遡上高40.5メートルに達しました。
ここで極めて重要なのが、「浸水高(しんすいこう)」と「遡上高(そじょうこう)」の定義の違いです。防災情報を見る際、この2つを混同すると危険の規模を見誤ることになります。
浸水高とは、津波が陸地に到達した際、地盤面や建物の壁に残った水面の高さを指します(あるいは平均潮位を基準とした水面の標高)。一方の遡上高とは、陸地に押し寄せた津波が山の斜面や谷筋を駆け上がり、最終的に到達したもっとも高い地点の標高(海抜)を意味します。姉吉地区では、V字型に切れ込んだ狭い湾の奥に向かって津波のエネルギーが集中し、斜面を駆け上がった結果、ビル13階分に相当する標高40.5メートルの高所まで木々をなぎ倒しながら津波が到達しました。
このデータ比較から明らかなように、「平野部では低く遠くまで」「リアス海岸では狭く高く」という物理特性が極端な形で現れました。東日本大震災津波被害状況の検証において、自らの地域がどちらの地形特性に該当するのかを認識することが極めて重要です。