ザ・デストロイヤーの正体は、アメリカ・ニューヨーク州出身のレスラー、ディック・ベイヤー(本名:リチャード・ジョン・ベイヤー)です。彼の経歴を紐解くと、当時のプロレス界でも指折りのエリートであったことが分かります。
名門シラキュース大学ではレスリングとアメリカンフットボールの双方で大活躍し、レスリングでは全米学生選手権(NCAA)準優勝の実績を誇りました。さらに大学院で体育教育学の修士号を取得しており、プロレスラーと並行して高校の体育教師やレスリングコーチを務める教育者でもありました。
彼が頑なに素顔を隠し、私生活でもマスクを脱がなかった理由には、以下の3つの明確な背景が存在します。
- 教育者・家庭人としてのプライバシー保護:教育現場に立つ教員としての日常と、リング上で観客を憎悪させるヒールとしての顔を完全に切り離す必要があった。
- ギミックに対する徹底したプロ意識:「ザ・デストロイヤーは覆面を被った独立した人格である」という世界観を観客に提示し続けるため、移動中やホテルのロビーでも覆面を着用していた。
- 知性派ヒールとしての神秘性の維持:大学エリートの顔を隠すことで、逆に「インテリジェント」というリングネームの不気味さを際立たせる演出効果を狙った。
昭和のプロレス関係者の証言によると、来日中の宿舎でも素顔の写真を撮らせることは決してなく、関係者に対してもプロレスの幻想(ケジメ)を崩さない姿勢を貫き通しました。この徹底した自己管理こそが、彼を単なる色物レスラーで終わらせなかった最大の要因です。