かつては中高年以降の悩みと捉えられていた度忘れですが、昨今は20代から30代の現役世代からの相談が急増しています。SNSやオンラインコミュニティ上でも「同僚の名前が咄嗟に出なくて冷や汗をかいた」「昨日見た動画のタイトルすら思い出せない」といった切実な声が溢れており、知恵袋などの相談プラットフォームでも若年層による記憶不安の投稿が目立ちます。
「会議でクライアントのキーマンの名前が完全に出てこなくなり、頭が真っ白になった。まだ30代前半なのに、自分の脳が壊れてしまったのではないかと恐怖を感じた」――これは都内ITベンチャーでプロジェクトマネージャーを務める男性(32歳)が、脳神経クリニック受診時のカウンセリングで吐露した生々しい告白です。取材に応じた複数の専門医によると、受診者の約7割は器質的な脳疾患ではなく、デジタル情報過多に起因する機能低下を抱えていると証言します。
この若年性物忘れの現在を紐解く最大の鍵が、脳疲労とど忘れの経緯です。スマートフォンの普及に伴い、現代人が1日に接する情報量は平安時代の1年分、江戸時代の1生分に匹敵すると言われます。スマートフォンで絶え間なくショート動画やSNSをスクロールし続けると、脳の司令塔である「前頭前野」のワーキングメモリ(作業記憶領域)が処理能力の限界を超え、オーバーヒートを起こします。その結果、情報の「整理」や「引き出し」を行うエネルギーが枯渇し、極めて身近な単語すら取り出せなくなる現象が多発しているのです。