境内北側に広がる藤棚には、岡山県の天然記念物に指定されている日本随一の巨木「阿知の藤(あちのふじ)」が鎮座しています。品種名は「アケボノフジ」。同品種としては日本最古、かつ樹冠の広さも日本一と評される奇跡の名木です。
幹周りは約1.5メートル、根本周囲は約2.2メートルに達し、推定樹齢は300年から500年。かつてツツジの古木に巻き付いていたものが成長し、現在では約300平方メートルにも及ぶ巨大な棚一面に枝を広げています。薄紅色のつぼみが開花とともに柔らかな紫グラデーションへと移ろう様は、見る者を圧倒する優美さです。
例年の見頃時期は4月下旬から5月上旬(大型連休前後)。毎年見頃を迎える時期には「藤まつり」が開催され、境内では雅楽の演奏や野点(のだて)が催され、多くの参拝者で賑わいます。温暖化傾向にある昨今では開花が数日から1週間ほど早まる年も見られるため、4月中旬以降の神社公式発表や開花速報を事前に確認しておくのが賢明です。
藤棚の下に入ると、甘く高貴な香りが頭上から降り注ぎ、木漏れ日のなかに揺れる無数の花房が幻想的な空間を創出します。古木特有の力強くうねる幹の生命力と、繊細な花びらのコントラストは、写真愛好家ならずとも息をのむ美しさです。