お賽銭を考える上で、いま避けて通れないのが急激な物価高と職人不足の波だ。
神社の社殿を維持するには、数十年に一度の屋根の葺き替えや柱の修繕が欠かせない。しかし、国産ヒノキや銅板の価格は高騰を続け、伝統工法を継承する宮大工の日当も上昇している。かつて数百万円で済んでいた小規模な改修が、今や数千万円規模の事業に膨れ上がることも珍しくない。
「賽銭箱に入っているお金は、神主の給料になるのではなく、数十年後、数百年後にこの屋根を直すための積立金なのです」。そう語る地方神社の責任者の言葉は重い。私たちが納める金額は、単なる「お願いごとの対価」ではなく、日本の風景と木造建築文化を後世に残すための「維持管理費のクラウドファンディング」としての側面を帯び始めている。