近年の伊野尾を語る上で欠かせないのが、ストレートプレイや本格ミュージカルの舞台で証明された圧倒的な表現力だ。かつて囁かれた「アイドルの課外活動」といった冷ややかな色眼鏡は、近年の板の上での狂気じみた熱演によって完全に叩き割られた。
普段の物腰柔らかな佇まいを完全に脱ぎ捨て、舞台上で感情を軋ませる彼の姿には、ある種の残酷な美しさすら漂う。台詞の間(ま)の取り方、声の抑揚、視線の揺らぎ一つひとつに、観客の呼吸を支配する緻密な計算が施されている。劇評家たちがこぞって彼の芝居を「抑制が生み出す不穏なリアリティ」と評価した背景には、テレビカメラの前では決して見せない、表現者としての剥き出しの執念がある。