VTuber業界全体を見渡しても、2026年初頭に発生した「にじさんじEN」に所属していたセレン・龍月(Selen Tatsuki)の契約解除は、組織に最も甚大な痛手を与えた事件として記録されています。英語圏市場の開拓において中核を担っていたトップライバーの電撃解雇は、単一タレントの進退を超え、グローバル規模でのボイコット運動へと発展しました。
事態の発端は、ライバー側が自費を投じて制作したとされる歌唱MVの非公開化措置でした。運営側は許諾確認の不備を理由に挙げた一方、ライバー側からはマネジメント業務の遅延やコミュニケーション不全を訴える声が漏れ聞こえる形となり、双方が主張する事実に大きな食い違いが生じました。さらに契約解除直後、本人の非公開医療情報や内部のやり取りを含む文書が関係者に共有されていたとする指摘が浮上し、ネット上では「組織的なパワハラや内部告発の握りつぶしがあったのではないか」という疑惑が急速に拡散しました。
批判の火に油を注いだのが、残された所属ライバー3名が運営管理下のチャンネルで会社側の立場を代弁する声明配信を実施した点です。これにより「タレントを矢面に立たせて企業防衛を図っている」との批判が海外ファンダム(特にRedditやX)を中心に爆発。国内外のファンによるグッズの不買運動が広がり、発表後のANYCOLORの株価は大幅に下落しました。言語の壁、時差、商習慣の違いが存在する海外ブランチにおいて、日本本社のガバナンスモデルをそのまま当てはめようとした「マネジメントの歪み」が白日の下に晒された瞬間でした。